コンテンツへスキップ
    トップに戻る

    非営利団体の「パスワード問題」解決ガイド

    付箋、使い回し、退職者アカウントの放置は、注意喚起ではなく「覚える数を減らす仕組み」で解決します。予算が限られていてもできる方法を、団体の状況別に整理しました。

    最終更新: 2026年10月9日

    1. 共有パスワードの現実的な答え

    サーバーを自分で用意しなくてよいサービスで、組織で無料のまま人数の制限なく共有できるものは、確認できた範囲では見当たりません(2026年10月時点)。現実的なのは、共有アカウントを使う人だけをBusiness Premiumにして、Entra IDで管理する方法です。

    管理者が共有アカウントを登録すると、職員はパスワードの中身を見ずにログインできます。使えるのはWebサービスに限られます。団体の状況ごとの選び方は次の表のとおりです。

    団体の状況まず使う手段
    Microsoft 365を使っている(または非営利プランを申請できる)共有アカウントを使う人だけBusiness Premiumにして、Entra IDの共有アカウント機能で管理する
    Google Workspaceだけを使っている2人までならBitwarden無料版。それ以上で予算が取れるならBitwarden Teams(1人月$4・年払い)
    技術担当がいて、SSOまで整えたい(50人以下)Okta for Good。50席無料、超えた分は50%引き。導入のハードルは高い
    技術担当がいて、サーバーを運用できるPassbolt Community Edition。ライセンス無料、運用は自分たち

    有料のツールは無料枠を超えた時点から費用が人数分かかります。パスワードの定期変更は不要というのが公的機関の考え方で、3か月ごとの変更ルールが残っているなら、その手間を仕組みの導入に振り向けるほうが今の考え方に沿います。

    各手段の詳しい条件と、定期変更が不要な根拠

    Entra IDの共有アカウントは、管理者がグループに共有の資格情報を設定し、職員はパスワードを見ずにログインする仕組みです。共有アカウントを使う利用者ごとにEntra ID P1以上のライセンスが要り、Business Basic(無料)だけでは使えません。P1はBusiness Premiumに含まれ、非営利は1人月$5.50相当(年払い)です。

    利用者はMy Apps経由でログインし、パソコンはEdge・Chromeの拡張機能、スマホはEdgeモバイルの設定で使います。スマホでもEdgeブラウザならWebサービスには使えますが、スマホのアプリやパソコンにインストールするソフトには使えません。サービス側がログイン画面を変えると、自動入力が止まることもあります。

    退職者をグループから外すと、Entra経由のログインはできなくなります。共有パスワードを知っている人は直接ログインできるため、退職時は共有パスワードを変え、そのサービスで退職者がログインしたままになっていないかも確かめます。パスワードを職員に見せずに運用していれば、変更の手間は小さく済みます。

    上限は、利用者に直接割り当てた資格情報が1人48件、共有の資格情報はグループごとに48件です。Edgeのパスワード同期はBusiness Basicでも使えますが、個人ごとの保存で、組織の共有保管庫ではありません。Googleパスワードマネージャーは無料ですが、共有できるのはファミリーグループの相手だけで、Google Workspaceの組織内で共有する公式機能は見つかりませんでした。

    Bitwardenの無料Organizationは2人・コレクション2つまでで、有料のTeamsは1人月$4(年払い)、人数は無制限です。1Passwordは非営利の支援はありますが、割引率・対象プランは公開されていません(1Passwordの掲載ページ)。

    Passbolt Community Editionは人数無制限・共有対応・ライセンス無料ですが、自分でサーバーを用意して運用する必要があります。

    Okta for Goodは、認証済みの非営利団体に50ライセンスを無料で提供します(SSO・多要素認証・ユーザー管理を含む)。50を超えた分は50%引きで、パスワードの共有保管庫ではなくID管理の仕組みです。条件はOktaの掲載ページにまとめています。

    定期変更について、総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」によると、2017年に米国立標準技術研究所(NIST)がサービス提供側は定期変更を要求すべきではないと示し、日本でも内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が定期変更は不要としています。定期変更を強いると、パスワードがパターン化・単純化しやすいためです。推奨されているのは、長くて使い回しのない固有のパスワードです。

    2. はじめの一歩

    01

    使っているサービスと共有アカウントを棚卸しする

    使っているクラウドサービスを書き出し、複数の職員が同じIDとパスワードで入っているものに印を付けます。退職者が知っているパスワードが残っていないかも確認します。

    30分で構いません。何件あるかが分かれば、次の手順の大きさが見えます。
    02

    Microsoft 365があるか確認し、Premiumにする人を決める

    団体の管理者が、Microsoft 365を使っているか、申請できる状態かを確認します。共有アカウントを使う人ごとにEntra ID P1以上が要るため、その人だけをBusiness Premium(非営利は1人月$5.50相当・年払い)にします。Business Basic(無料)だけでは使えません。

    Premiumにするのは共有アカウントを使う人だけで構いません。申請方法はMicrosoft 365非営利プランのガイドにまとめています。Microsoft 365を使わない場合は、上の表から別の手段を選びます。
    03

    共有アカウントをEntra IDに登録する

    団体の管理者が、共有しているサービスのアカウントをEntra IDに登録し、使う職員のグループを指定します。職員はEdgeかChromeの専用拡張機能を入れると、パスワードを見ずにログインできます。退職者はグループから外せばEntra経由ではログインできなくなりますが、共有パスワードを知っていれば直接ログインできるので、退職時は共有パスワードを変え、そのサービスで退職者がログインしたままになっていないかも確かめます。

    登録できる資格情報は、利用者に直接割り当てる分が1人48件まで、共有の資格情報はグループごとに48件までです。まず使用頻度の高い数件から始めてください。

    まず棚卸しをして、Microsoft 365があれば、共有アカウントを使う人だけをPremiumにしてEntra IDに登録する。ここまでが明日の仕事です。

    3. 運営メンバーのひとこと

    Oktaの導入は、技術担当がいない団体にはハードルが高いと感じます。無料の枠を超えて有料に切り替わったときの負担も重い。組織で無料のまま使える、実用的なパスワード管理の手段があればいいのですが。

    4. 出典リンク

    このガイドは2026年10月時点の各社の公式ページと、総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」の記載にもとづいています。各プログラムの内容は変更されることがあるため、導入前に公式ページで最新の条件をご確認ください。